特集 ICUルーチン
第3章 ICUの環境整備・スタッフ関連
16.清拭・環境整備と除菌―見た目が変われば周りも変わる
櫻本 秀明
1,2
Hideaki SAKURAMOTO
1,2
1筑波大学附属病院ICU看護師
2筑波大学大学院人間総合科学研究科 疾患制御医学 麻酔・蘇生分野専攻
pp.291-298
発行日 2014年4月1日
Published Date 2014/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100654
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あたかも他人との近さのなかで,他人の顔,他人のなかにみられる表情が(人間の身体全体も,その意味では多かれ少なかれ,顔なのですが),他人に仕えるように私に命令する。
エマニュエル・レヴィナス
(西山雄二訳『倫理と無限 フィリップ・ネモとの対話』より)
身体清拭や環境整備は“美しさ”を保つ作業である,ともいえる。そこには,表情や臭いなどの要素も含まれる。想像してほしい。愛する人が事故にあい,ベッドに横たわっている。幸運なことに生命の危機は脱した。「本当によかった」と一息つきながら,あなたはベッドサイドの椅子に腰かけ,愛する人の手を握る。そして,その手に“そっと”自分の頬をよせる。その時“よごれや,臭い,着衣の乱れ”といった美しさにかかわる要素が,家族である“私”の心理と行動に影響を与えないだろうか。そして,それらは家族だけの問題ではないように思う。見た目や臭いといった要素が,どのように我々医療者の心理や行動に影響を与えるのだろうか。
Summary
●清拭は,患者の快適性を保つ行為であるとともに,見た目の影響で不利益な治療・ケアを受けないために行われる可能性がある。
●1日1回の2%クロルヘキシジン清拭には感染症発生率を低下させる効果があるかもしれない。
●アウトブレイク時,消毒清拭や積極的な環境整備を組み合わせたバンドルアプローチがその後の感染制御に効果的であるかもしれない。
●雑音や夜間の光量の調整などの環境調整により,睡眠の質を改善するとともに鎮静薬使用量を減らし,譫妄を予防できる可能性がある。
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