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近年,外国人患者は増加の一途を辿っている。日本政府観光局Japan National Tourism Organization(JNTO)公表資料によれば,2020年の訪日外国人旅行者数は411万5828人であった。COVID-19の流行による入国制限の影響を受け,前年の3188万2049人から大幅な減少となった(-87.1%)。2021年1〜2月の2か月では5万3900人の訪日外国人旅行者が入国している1)。また,日本で暮らす在留外国人数は288万5904人(2020年6月末時点)で,196の国や地域にルーツをもつ人が暮らしている2)。
外国人診療は,日本在住の外国人診療,訪日外国人旅行者の不慮の病気や怪我による受診,人間ドック,先端医療を目的とした医療ツーリズムなど,受診する外国人患者の背景はさまざまである。外国人患者の診療は日本人に対する診療と比べ,言葉の壁や保険,異なる文化や生活習慣,宗教への対応などさまざまな事柄に配慮する必要があり,日本人患者への対応よりも時間がかかる。さらに病院経営の面では,無保険の患者,経済的に困窮している患者が少なくなく,未収金の発生リスクを負いながらの診療を余儀なくされることも多い。特に急性期医療では,緊急手術や集中治療の医療費が高額となることから,来院早期から遠隔通訳サービスや専門職種と協力して情報収集を行い,未収金の発生防止を含む包括的な患者支援に当たることが有用と思われる。東京医科歯科大学医学部附属病院(以下,当院)は,東京の中心に位置し救命救急センターを有し外国人の救急患者を診療する機会が多い。医療機関により外国人に対する診療体制は異なると思われるが,本稿では,救急で来院した無保険の外国人患者に関するケーススタディを通して,その対応方法を紹介する。本症例は架空の設定であり,実在の人物とは関係はない。
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