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重症外傷,腹部大動脈瘤破裂,急性膵炎など,重症病態の患者の治療中,短時間のうちに腹部が膨満・緊満し,それに伴い血圧・尿量低下,呼吸状態の悪化,アシドーシスの進行が起こり,治療に苦渋する。集中治療にかかわる医師であれば誰しも覚えがあるだろう。原因精査のために腹部CTを撮影しようとCT室に移動中,心肺停止したりバイタルサインが悪化したりすることもある。腹部膨満・緊満を何科に相談したらよいかと悩み,もはや手の打ちようがない,と判断してしまうことさえあるかもしれない。「すみやかにどう対応すればいいの?」「防ぎ得る死を防ぐための実践的なマニュアルはありますか?」との現場の声をもとに,腹部コンパートメント症候群(ACS)を今回の徹底分析のテーマとした。
本徹底分析は,World Society of the Abdominal Compartment Syndrome(WSACS)のガイドラインを参考にしつつ,この領域において臨床現場の第一線で活躍している執筆陣による,最新のエビデンスにもとづいた実践的な内容となっている。わかっているようでわかりづらい,ACSの病態生理,病因,圧測定方法,治療などを,単なる知識の羅列にならないように構成・解説した。実践的な対応については,ケーススタディーを通して理解していただけるだろう。腹部大動脈瘤破裂を取り上げているのは,近年,ステント留置術が多く行われており,ステント留置後のACSへの進展にはすみやかな対応が必要だからである。また,「開けるが勝ち」のコンセプトのみならず,急性膵炎などでは適切な初期診療や集中治療により,開けない(開腹しない)マネージメントも重要となるため,「開けたら負け」のコンセプトも取り上げた。
本徹底分析でACSに対する理解を深めていただき,防ぎ得る死を回避できたら,このうえない喜びである。
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