症例カンファレンス
重度肥満患者の巨大卵巣腫瘍摘出術
髙田 真二
1
,
山下 幸一
2
,
山口 昌一
3
,
豊島 歩美
4
,
岡田 真行
4
,
川前 金幸
4
,
原 芳樹
5
Koichi YAMASHITA
2
,
Shoichi YAMAGUCHI
3
,
Ayumi TOSHIMA
4
,
Masayuki OKADA
4
,
Kanayuki KAWAMAE
4
1帝京大学医学部 麻酔科学講座・医学教育センター
2日本赤十字社高知赤十字病院 麻酔科
3磐田市立総合病院 麻酔科
4山形大学医学部 麻酔科学講座
5帝京大学医学部 麻酔科学講座
pp.613-629
発行日 2018年6月1日
Published Date 2018/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201138
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今月は,巨大卵巣腫瘍を有する重度肥満患者の周術期管理を検討する。麻酔科専門医レベルであれば,巨大腹腔内腫瘍が患者の呼吸・循環に及ぼす影響および術中管理の要点を熟知しているであろう。腫瘍内容物を急速に吸引除去した場合の循環動態や術後呼吸状態の変動についても複数の症例報告があり,その対策を立てることは困難ではない。睡眠時無呼吸を合併する重度肥満患者の周術期管理に関しても,安全な周術期管理に関する共通認識が確立されつつある。したがって,個々の問題点に対する最も安全で合理的な周術期管理を計画すること自体は,それほど困難なことではない。
しかし複数の問題が同時に存在する場合に,問題Aに対する最良の処置が問題Bを悪化させるという状況が,臨床の現実である。利用可能な実際のリソースを考慮しながら,全体を俯瞰してバランスのとれた周術期管理計画を立案し実行するには,ガイドラインを超えた「熟練者の経験・知恵」が求められる。100点満点ではなくても許容できる転帰を達成する,という現実的な対応が必要になることもある。
多数の併存疾患を有する高リスク患者の周術期管理法に,唯一の正解はない。本症例カンファレンスを通して,これから専門医を目指す若手読者の「考え方の引き出し」が増えることを期待している。
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