紹介
「ヨーロッパ蘇生ガイドライン2015」における歯科治療中の心停止への対処
一杉 岳
1
,
横山 武志
1
1九州大学大学院 歯学研究院 歯科麻酔学分野
pp.741
発行日 2016年8月1日
Published Date 2016/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200636
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
歯科における救命処置の問題点
国際蘇生連絡協議会International Liaison Committee on Resuscitation(ILCoR)と米国心臓協会American Heart Association(AHA)によるガイドライン2000の公表を受けて,日本でも,AHAのガイドラインに沿ったバイスタンダーによる一次救命処置basic life support(BLS)が普及している。ガイドライン2010では,人工呼吸よりも胸骨圧迫の重要性が強調されている。このような救命処置の普及は,公共の場で発症した重症偶発症に対する救命率を飛躍的に向上させた。
一方で,90年代頃から歯科医院における死亡例も報告されるようになり,歯科医師にとっても救命処置の重要性が認識されるようになっている。しかし,AHAガイドラインにある救命方法では,歯科治療中の重症偶発症に応用が難しい部分がある。例えば胸骨圧迫について。デンタルチェアの背板の下には支えがなく,この上で胸骨圧迫が可能としている機種は限られている。チェアから床に患者を移動させようとすると,最低でも3人,機種によっては5人が必要である。これだけの人手を確保できる歯科医院は限られる。歯科診療では気道閉塞も生命予後に影響する重症偶発症だが,異物を咽頭から気道に落下させた場合,坐位にすると二次落下を生じやすくしてしまう。後ろから抱え込むHeimlich法は,歯科環境では禁忌になる。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.