症例検討 肺水腫
肺水腫の発生機序と治療—修正Starlingの式と肺水腫
三井 誠司
1
,
橋本 悟
1
Seiji MII
1
,
Satoru HASHIMOTO
1
1京都府立医科大学 麻酔科・集中治療部
pp.1136-1141
発行日 2015年11月1日
Published Date 2015/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200431
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Starlingの式は単機能の半透膜を用いたモデルで,長きにわたり血管壁を通じた物質の移動や肺水腫の発生機序をうまく説明してきた。しかし近年,血管内皮細胞の機能と構造,特に血管内腔と血管内皮細胞のインターフェイスとなる内皮グリコカリックス層endthelial glycocalyx layer(EGL)の働きが明らかになるとともに,血管内皮障害の本態はEGLの障害であることもわかってきた。これにより,静水圧上昇型・透過性亢進型という従来の肺水腫分類は,内皮障害を誘発する因子による違いであり,肺水腫の発症メカニズムは“多機能膜であるEGLの障害”というシンプルなモデルで説明された。EGLは,細胞内外の多くの因子と相互作用し,その全容は完全には解明されていないが,EGL機能の維持・回復は創薬および新しい治療法の開発のターゲットとして期待される。
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