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◆3月は卒業の季節です。ただ,出版社に勤務していて学校行事に関与する機会はなく,同居家族に児童・生徒・学生もいないので,ほぼ,他人事です。なので私にとっての3月は,テレビ番組の編成が変わる季節です。放送回数が確定しているドラマが最終回になるのは当然ですが,続けようと思えばいくらでも続けられるコンテンツが終了となると,それをまあまあ気に入っていた身としては,“卒業”に共通する,もの悲しさを覚えます。
そこで真っ先に思うのは「視聴率」です。平日のお昼時に毎日生放送をしていた国民的バラエティ番組が惜しまれつつ終了,という特殊な場合ならば,ほかの要因も大きく影響するでしょうが,多くの終了の原因が視聴率であることは容易に想像できます。自分は気に入っていたのに,ほかの大勢にはあまり支持されていなかったのか…という現実が,“もの悲しさ”を生んでいるような気がします。
◆逆に,自分の評価が他者と一致すると嬉しくなります。
小学生の頃,近所に「ばんび文庫」という私設の図書室がありました。S川さんという姉の同級生のお母さんが運営していました。ご自宅の庭というか,玄関前の空きスペースに増築された4畳半ほどの離れの一室がその場所です。名前の通り,こども向けの絵本や童話などが並べられ,その場で読みふけってもいいし,借りて帰ることも可能です。近所の子供たちが,思い思いに訪れ,気ままに本を選んで帰っていく空間でした。
あるとき,母から「S川さんが,あなたは“いい本”を選んでいる,と言っていたわよ」と言われ,それを褒め言葉と受け取った私は,いっそう熱心に通うようになりました。
◆価値観は多様ですから,“いい本”選びに正解も誤答もありません。“いい本”という定義や基準があったら,世の本はすべてベストセラーです。つまり,S川さんと私は,本選びに関して価値観が一致したということなのでしょう。ただ小学生にとって,自分の選択はこれでいいのだ,という自信になったのは確かです。
価値観の共有は,喜びであり,自信であり,さらに前進する原動力です。当然,LiSAも読者から「いいね」と言われたい(なのでLiSAアンケートにご協力ください)。ただし,「あの人がいいと言うから私もいい」ではなく,「他者の評価は関係なく私はこれがいい」としているものに対する「いいね」でないと,価値観共有の効用は得られないものだなと,番組終了の“もの悲しさ”とともに考えました。
◆卒業は,新しい世界への入口でもあります。小学生の私は,いつしか学習塾通いが優先されて中学生となり,「ばんび文庫」からも卒業していました。そして,中学校の通学路にあった区立図書館を大いに利用するようになりました。
LiSAにも,読者から支持され惜しまれながら終了した連載がありますが,また新しい“いい記事”を提供すべく奮闘中です。お楽しみに。
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