連載 周術期加温のアウトカム
論文バトルロイヤル(その1):Sesslerと消化器外科医の闘い
溝部 俊樹
1
Toshiki MIZOBE
1
1京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学教室
pp.592-594
発行日 2014年6月1日
Published Date 2014/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101102152
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積極加温のアウトカム
1996年の『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に発表されたSessler(当時カリフォルニア大学サンフランシスコ校麻酔科)らのグループによる,結腸手術後のアウトカムに関する研究結果1)は,衝撃的であった。多施設前向きランダム化臨床研究という最も検定能力の高い手法を使って,積極加温を行った正常体温群(n=104,36.6±0.5℃)と比べ,加温を行っていない低体温群(n=96,34.7±0.6℃)では,手術部位感染surgical site infection(SSI)が多く(6% vs. 19%,p<0.01),経口摂取や抜糸の遅れから入院期間が延長する(12.1日 vs. 14.7日,p=0.001)ことを,p<0.01以下という非常に高い有意差でクリアカットに示した。彼らは,この理論的根拠として,体温低下に伴う末梢血管収縮により末梢組織への酸素供給が低下し,これが免疫機能の低下につながり,SSIが増加する,と推論した2~5)。
さらにSesslerのグループ6)は,1996年『Lancet』に,人工股関節置換術において加温を行っていない低体温群(n=30,35.0±0.5℃)では,積極加温を行った正常体温群(n=30,36.6±0.4℃)と比べ,術後翌朝までの出血量が有意に多く(1670mL vs. 2150mL,p<0.001),その結果,輸血量も有意に多くなることを発表し,これは,体温低下に伴う血液凝固因子や血小板機能低下によると結論付けた。
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