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◆自宅の最寄り駅からの帰宅途中,若い男性から声を掛けられました。聞くと,訓練中の美容師で,カットモデルになってほしいとのこと。気持ちよくお引き受けいたしました。
ヘアスタイルにこだわりがない(=練習台になることも構わない)人,と見られるのでしょうか。街角で「髪を切らせてくれ」と依頼をされたのは2回目です。カットモデルというと,技術不足の人に妙な髪型にされてしまう,と危惧する方もいるかもしれませんが,心配ご無用。技術的に未熟な部分はありますが,指導者がチェックをして,場合によっては,きちんと直してもらえます。
◆前回の彼女は,私の要望に忠実すぎて全体がまとまらない,という未熟さがありました。「横の髪は耳に掛けられる程度の長さを保ってください」という一点は確かに達成できていましたが,全体にモッサリとして,美容院に行ったばかりのサッパリ感に欠けました。「ちょっと,難しい要求だったかな?」と思っていたら,指導者がバッサリと修正してくださいました。
そして今回の彼は「全体の形をもっと早く作って,残りの時間は細部にこだわって整えないと駄目」と指導されておりました。
限られた時間の中で,細部にこだわりつつも全体のバランスを整えて完成させるというのは,多くの仕事に共通して求められることのようです。いつも,編集部メンバーに口うるさく指摘していることにお墨付きをもらえたようで,心が大変に安らぎました。
◆もう一つ心が安らいだのは,修行中の若者が真剣な眼差しで自分の精一杯の力量を発揮しようとする姿を見せてもらえたこと。あのように頑張ってくれるならば,仕上がりに少々の難があっても,「いいよ,いいよ」という気持ちになります。
もちろん,所詮は髪の毛で,数日~数か月もすれば,折角,細部にこだわっていただいた部分も,見る影もなくなることがわかっているからです。一方で,救急救命士がプレホスピタルで挿管するためには,30例の訓練を必要とすると決められたとき,「承諾する患者さんはどれだけいるのだろう?」と疑問を持ちました。
医療行為となると,そう気安く「いいよ」とは言えません。私の場合,「人形を使って,あらゆる困難気道に対しても練習を積み重ね,自分の家族に対しても安全に手技をする自信があります」と,本人から真剣な眼差しで言われたら,その傍らに十分信頼できる指導医がいるのを確認して,承諾するでしょう。
指導者の技術に対する信頼は当然ですが,訓練に臨む人の真剣さがほしいのです。
◆今年流行の「いつやるか?」「今でしょ!」は,面白おかしく消費されている感がありますが,実は,誰もが持つ“真剣スイッチ”をONにする魔法のフレーズです。だから,皆が口にするのでしょう。
さて私も,後回しにしていたアレコレを,今,やることにいたします。
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