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■9月13日の朝日新聞朝刊を開いて驚きました。見開き全体に裸の男女がバナナを追って走り回るカラー写真,左上には白抜き文字で「ヒトは,本を読まねばサルである。」とあります。それは動物園の猿山。その強烈な30段広告に,いったい何の広告だったのか(読書週間には少々早いが,読書のススメであることぐらいはわかります),広告主が誰であったかには気づきませんでした。これは宝島社の広告。ホームページのサイト「企業広告」で,広告意図とあわせて見ることができます。最初の興奮が過ぎると,このコピー,ずいぶんサルに悪いよな,と思えてきました。ヒトにはヒトの,サルにはサルの領分があるわけで,これはサルに非礼である,と。逆に,「サルは,本を読まないヒトである」といったら,もっとサルから怒られるような気がします。
あの手この手と,電子書籍拡販のために各出版社が頭を悩ませています。そのことについて,タレントの水道橋博士が「電子書籍が進まない理由。そもそも本好きな人が特殊。08年文化庁の調査。1か月に1冊も読まない人が46%,1~2冊の人が36%(雑誌や漫画を除く)日本人の8割は月に2冊も本を読めば上等な状態。本を読む人こそ変態なのだ」とつぶやいているとのこと。そうだよねと,08年文化庁の調査データをみると,全体を通して46.1%のヒトがサルなのですが,年齢別では,60歳以上が55.6%とそのサル度が高い。
この調査は16歳以上の男女を対象に,「現在,雑誌や漫画を除いて,1か月に大体何冊くらい本を読んでいるか」を尋ねたもので,選択肢は,「読まない」「1,2冊」「3,4冊」「5,6冊」「7冊以上」「わからない」の六つ。こうした調査でいつも思うのは,本の種類。雑誌,漫画以外といっても,例えば,日本書籍出版協会の近刊図書情報「これから出る本」には,専門書あり,一般向け図書あり,ガイドブック,実用書,参考書ありと,多種多様。大きさだって,いわゆる単行本から,新書版,文庫本とさまざま。頁数だってそう。1冊といっても,いろいろある。もう一つ,調査対象がわからない。まあ,読書の質ではなく,本に親しんでいるかどうかの調査であり,細かいことを言うことはないのですが…。
気になるのが,各年代にわずかながら「わからない」がいること。これはいかように解釈すべきなのか。で,考えてみました。読む月もあれば,まったく読まない月もあり平均できない。また,何冊も読むのだが,1冊も読み通したことがない(好きな,必要な箇所だけ読む)。画集や詩集を愛読するが,これを1冊の本としてよいか自信がない。さらに,本というものが何だかわからない(これは結構すごい)。あるいは,読書行為とは何を意味するかがわからない。こうなると,読書体験とはなんぞやと,深遠な哲学的考察の域に入り込み,「本を読まねばサルである」なんて,のんきなことは言っていられなくなります。オランウータンを登場させなければいけません。ここはサルと比べることなく,とある人の言葉を借り,「脳みその溝は刻めるうちに深く刻む,そのために本を読みましょう」と締めくくりましょう。
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