徹底分析シリーズ 周術期管理に必要な抗血小板療法の理解2
抗血小板薬と周術期管理:続ける危険と止める危険
香取 信之
1
KATORI, Nobuyuki
1
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.526-531
発行日 2010年6月1日
Published Date 2010/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100948
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
抗血小板薬は,心血管系疾患を始めとするさまざまな疾患や病態において,その治療や予防に用いられており,その有用性は広く認められている。特に,アテローム性血栓疾患の増加とともに,その対象患者は増加する傾向にある。しかし,周術期の出血リスクを減らすために術前には抗血小板薬は止めるものと思っている医師は非常に多く,麻酔科医が術前回診に訪れたときにはすでに抗血小板薬が休止されていることも珍しくはない。
確かに,抗血小板薬の内服は安静時ですら出血リスクを高くするので,手術に際して主治医が抗血小板薬を休止したいという気持ちは理解できる。麻酔科医にとっても,抗血小板薬が休止されていれば,脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔などの神経ブロックが可能となり,麻酔法の選択肢が広がることになる。しかし,虚血性心疾患においては服用中止により心筋梗塞の発生率や死亡率が増加することを忘れてはならない。
周術期に抗血小板薬を休止するか否かは,手術の緊急性や侵襲度,抗血小板療法の適応となった疾患の重症度を考慮して慎重に判断しなければならない。抗血小板薬の継続・休止は,どちらも予後に大きく影響する合併症を起こす可能性があるため,周術期にかかわる医師にとっては非常に悩ましい薬物である。だからと言って,この問題を避けて通ることはできない。
Copyright © 2010, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.