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■手術後10日あまり,始めての入院。病室とは,実に不可思議な空間。しかし,そうした空間,時間の経過に,いつの間にか自らがとけ込んでいくのです。何とも貴重な体験をしました。
術後は外科病棟がいっぱいということで,内科病棟,8人部屋に収容させられました。手術当日はともかくベッド上安静,食事なし,抗生物質ならびに輸液をがばがば(そんなイメージ)入れられました。上半身はともかく,下半身はなかなか自由にはなりません。もっとも,しびれた感じはなく,夕方から夜に向け,指を動かそうと試みるごとに,徐々にではありますが神経回路がつながっていくのがわかります。しかし,手術創が痛い。硬膜外麻酔での術後疼痛管理,PCAなどを期待していたのですが,何もなし。その夜のナースは,痛ければ坐薬がありますよ,と言ってくれるのですが,意識清明な私は「坐薬」という言葉になにがしかの恥ずかしさを覚え,やせ我慢。でもそれも最初だけで,ナースに身を委ねるはめに。で,そのボルタレン坐薬が実によいのです。その夜はぐっすり眠れました。
翌朝,6時に点灯,ガバーッと仕切をあけ,看護師が検温に回ってきます。また,ドレーンからの排液を処理し,点滴。そして,尿意について質問。前夜は,「かなり輸液が入っているので,おしっこが出ないと体に毒です」と言われた手前,出そうな気がしますとつい返事。しかし,尿瓶を渡されるも,いっこうに出る気配は…。手術後の尿閉を経験した外科医から聞いた,水道から流れ出る水の音を聞いたら出せるようになったという話を思い出し,折しも,廊下から水の流れる音。しかし,そう話はうまくいきません。そこで,かつて幼子にしたように,自ら「シーシー」と言い聞かせるも,やはりだめ。でカテーテル挿入となるのですが,下腹部を押しての排尿とは何とも奇妙。朝からそれはイヤだと思っていたら,主治医が到着。麻酔の影響で出にくいでしょう,もうしばらくすれば,トイレでちゃんとできますよ,と。事実,その通りでした。
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