症例検討 モニタリングをめぐるトラブルとその対処法2
筋弛緩モニター:筋弛緩モニターの四連刺激で1発しか反応がないのに,患者がバッキングした。
原因は何であれ,麻酔薬の追加投与を迅速に/適切な鎮痛度を保つことで,バッキングは予防できる
廣瀬 宗孝
1
,
信川 泰成
1
,
田畑 麻里
1
,
瀬尾 勝弘
2
,
篠崎 友哉
2
Munetaka HIROSE
1
,
Yasunari NOBUKAWA
1
,
Mari TABATA
1
,
Katsuhiro SEO
2
,
Tomoya SHINOSAKI
2
1福井大学医学部 麻酔・蘇生学領域
2社会保険小倉記念病院 麻酔科・集中治療部
pp.394-399
発行日 2008年4月1日
Published Date 2008/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100082
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症例
39歳の女性。身長156cm,体重66kg。食道裂孔ヘルニアと食道憩室に対して,胸腔鏡下食道局所切除術が施行された。麻酔は,胸部硬膜外麻酔とセボフルランによる全身麻酔で行われた。胸部硬膜外カテーテルを挿入したあと,プロポフォール120mgと非脱分極性筋弛緩薬(NDMR)のベクロニウム8mgにより気管挿管を行い,分離肺換気のための気管支ブロッカーを留置した。ベクロニウムは,筋弛緩モニター〔TOFウォッチ,(オルガノン社)〕を用いて,母指内転筋での四連刺激(TOF)で4発目の反応(T4/T1)がみられたら,2mgを追加投与した。硬膜外カテーテルには,0.75%ロピバカイン3~4mLを適宜投与し,セボフルラン1.5~2.5%で麻酔を維持した。
午前10時に手術が開始され,左側臥位で分離肺換気は問題なく行われ,血圧(BP),心拍数(HR),パルスオキシメータ値(SpO2),終末呼気二酸化炭素分圧(EtCO2),BIS値に,特に大きな異常はなかった。ところが手術開始後3時間半が経過した13時半頃,TOF刺激でまだ1発目の反応(T1/T0)しかないのに,突然,患者がバッキングした(図1)。手術操作は食道裂孔部のはく離が進んでいた。
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