巻頭言
医学教育と研究
岩瀨 善彦
1
1京都府立医科大学生理学教室
pp.273
発行日 1959年12月15日
Published Date 1959/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906099
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著者は研究所に長らく居た関係で医学教育に経験が浅いが,最近医学校に来て感ずる事は我々が戦前に受けたと同様な教育のやり方を今尚行つており,自分もそれを続けている事に驚いたり,又反省したりしている。
ラジオはテレビに変り海外との交流も盛んになつた今日何か新しい工夫でもないかと考えている。近く旧制大学は無くなるのであるから,教育や研究の面に於てさまざまな創意と工夫が必要である筈である。講義にしても基礎医学全体にまたがる分野も多くなり,又基礎と臨床との関連に於ても新らしい総合的な講義がどんどん試みられてよいのではないかと思う。又その方法も従来のノート中心主義を改め例えば講義の概説,項目や実験の記録,図表などを要領よく書いたプリントを与え,更にスライド,映画などをより多く利用すべきだと思う。要は受講中に理解し,記憶し,質疑出来るようにし能率のよい授業が行われたらよいのである。大学の教育であるから学問の内容は勿論深くなければならないが,広範囲に全部を教える事は必要がない。各自の能力に於て勉学出来る基礎を養成させ,将来何をやらせても自力で道を拓いて行ける様な教授をすべきだと思うし,又それだけの抱負を持つて大学に入学して貰いたい。又学生以外にPostgraduateの教育にも重点を置き,学校を離れ最新の学問に接する事の少い医師の再教育も今後必要になつてくるであろう。
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