Japanese
English
綜説
神経繊維の超微構造に関する最近の知見
A Note on the Ultrastructure of Nerve Fibers
本陣 良平
1
Ryohei Honjin
1
1金沢大学医学部解剖学教室
1Department of Anatomy, Faculty of Medicine, University of Kanazawa
pp.110-121
発行日 1957年6月15日
Published Date 1957/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905946
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いとぐち
神経繊維の微細構造については,19世紀末から今世紀に渉つて,論争の焦点となつた多数の問題がある。今その主なものを挙げれば,所謂神経原繊維(neurofibril)の存否,軸索膜(axolemma membrane)の存否,髄鞘の微細構造とその発生,Schwann氏細胞と神経鞘(neurilemma sheath)の異同,神経膠細胞と神経繊維との関係,所謂synapsisの存否,等がある。これらの諸問題は,多数の研究者によつて,夫々新らしい効果ある研究法により,多彩な所見と結論に導かれ,これに関する知見は著しい進歩を示したが,数々の論争が存し,且つその多くが解決を見るに到らなかつた最大の原因は,従来の可視光顕微鏡(以下「光顕」と略記する)による検索は,その理想的な使用時に於てすら,その分解能である0.2μの限界を超える所謂超微構造を覗うことが許されず,神経繊維を構成する種々の要素の間に存する僅少な密度の差を示すには余りに鈍感であり,超微的構造に関する諸説は推論の域を脱し得なかつたが為である。一部の困難性は,紫外線顕微鏡・暗視野顕微鏡・偏光顕微鏡・位相差顕微鏡の出現によつて解決されたが,大幅な解決は電子顕微鏡(以下「電顕」と略記する)の出現を待たねばならなかつた。即ち電顕の示す高解像力と密度に対する鋭敏性は,上記諸問題を更に解決に近からしめつつあると考えられる。
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