Japanese
English
綜説
高エネルギー結合の電子状態
Electroric State of High Energy Bonds
大鹿 譲
1
Yuzuru Ooshika
1
1小林理学研究所
1Kobayasi Institute of Physical Resarch
pp.322-330
発行日 1956年8月15日
Published Date 1956/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905900
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1.問題のありかた
我々の見る自然界は整然たる段階構造をなしており,物質は低次の集合体から高次の集合体へ,即ち均一相からコロイド,コアセルヴェートをへて生物体,社会的集合体へと次第に進化していく。進化のそれぞれの段階を扱う科学が物理科学,生物科学,社会科学であり之らは各々固有の歴史と方法を以つて発展して来たものである。ところが近時生物科学に物理的方法と概念とを導入することが一種の流行になりつつあり,生物学者争つて新実験技術を用い,物理学者の間でも又先物買が盛んである。勿論広い意味の物理科学の方法特に化学的方法は,生体もやはり物質の集合体である以上,以前より広く用いられて生物化学や生理学という分野を確立していることはいうまでもないが,更に現在では物理及び化学の技術の進歩によつて既に化学と物理のはつきりした境界はつけにくい状態で,これが更に生物科学に迄広がろうとする勢である。特に近年の多種多様の実験技術の進歩,トレーサー使用の発展,分子物理理論の無生物分野での各種の成功,制御理論の発展等によつて生体現象の物理化学的解明も遠い将来ではないという感じを起させるほどである。ところでこの様に生物体のからくりのなぞが解つた,あるいはもうすぐわかるだろうと考えられた時代は過去においても度々あつたように思われる。
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