海外通信
滞米見聞記(3)—Cornell大学に於ける藥理学講座(続)
橋本 虎六
1
1東京大学医学部藥理学教室
pp.50-54
発行日 1955年8月15日
Published Date 1955/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905848
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勉強も前回に述べた如く激しいですから,又アルバイトをしながら等はとても考えも及びません。1年最低で4000ドルはかゝると思います。入学の時の審査の時,コースを終えるだけの資力があるや否やが大きな条件になります。この点はひよつとしたら不快に感ぜられる方もあるかと思いますが,この様な教育の最高水準を行こうとなれば寧ろ親切と考えるべきと思います。州立大学に行けば,月謝もすこぶる廉価(300ドル位)です。ですから学生の気風も金持の坊ちやん式のところがありまして誠に明るく,議論好きです。ぐうたら学生が居ない点でも外来者に気持が良いですが,米国中でも才能にめぐまれ,資力にめぐまれた家庭の子弟であると思います。女の学生も数名居り黒人も1名,イランのモサデク元首相の親戚が1人居ります。女の学生の能力を聞きましたら1952年,1953年の最高点は女学生で,本年も1人成績の優秀なのが居る由でこれには驚きました。何故かと云いますと,藥理の講義でもこゝでは単なる暗記ではとても駄目で記憶力の上に理解力,判断力,思考力がないと駄目で,女の学生は質問をする事はそんなに多くないし,女は記憶力はいゝかも知れないが理解力なんか低級だろうとの私の予想が全くはづれました。女は男の学生に質問させて自分でそれを捕えて居るのでしようとしか思えません。
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