研究報告
結核症に於ける血清カルシウムと血糖との相互關係
蒲生 勝
1,2
1東京醫科歯科大學生化學教室
2東京鐵道病院 第二内科
pp.206-209
発行日 1950年1月15日
Published Date 1950/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905490
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緒論
結核症に於ける血中Ca‥量の問題は其の病竈に於ける石灰沈着,更に推進(Schub)或は増惡時に先行すると考えられる脱石灰の現象に關連して從來甚だ重要視せられ,其の測定報告は極めて多い。併し其の結論としては未だ確定的の定説を得るに至らず,例ば宮井1),益富2)氏は増加すると云い,Henius, Richert u.Bing3),Krövnehe4),菊地5)氏は大多數が正常範圍内にあつて病型との關係は認め難いと云う一方Dolgopol6),Kaminsky and Davidson7),渡邊8),田中9),菊地,小田島及び三浦10),栗谷川11)氏の云う如く輕症或は増殖硬化型のものはCa‥量比較的多く,重症或は滲出型のものは少い傾向を有すとなす學者も多く,更に此の場合と雖もそれが治癒の傾向にあるものに於ては滲出性のものにあつてもかえつてCa‥量の増加を認めるという事が云われている。
著者は本問題中,殊に増惡時に於ける,或は之に先行すると考えられる脱石灰の現象に興味を持ち,此の角度より之等の患者の血中Ca‥量の消長に注意した。然るに一方此の脱石灰の問題に就ては,從來其の機序に對する考え方は専らAcidosisに依つて脱明されようとしている。併し血中Ca‥量は之以外の原因,例えば含水炭素の同化異化に件う燐酸鹽の動搖等に依つて影響される事も豫想に難くない。
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