實驗室より
C-R結合増幅器による記録曲線の補正に就て
江橋 節郞
1
1東大・藥理學教室
pp.167-170
発行日 1949年10月15日
Published Date 1949/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905480
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序
波形の正確さが要求される場合には,直結増幅器を用いることが理論的にはよいのであるが,實際には使用上安定度の點に重大な困難があり,殊に生物電氣測定の樣な場合には,この困難は生體の特殊事情によつて更に増大される。從つてC-R結合増幅器で得られた曲線に適當な補正を加えて,加印原波形を想定する場合が多いこの場合,補正方法としては,例の調和分析によつていた。即ち,記録曲線に調和分析を施し,増幅器の周波數特性,位相特性に基いた補正を加え,更に之を再合成するのである。しかし,調和分析の本質を反省するならば,生物電氣の如き場合に之を應用することは,調和分析が生物の發生する過渡的電氣現象に對しては,本質的に無意味だという點は暫く無視するとしても,なお次の如き困難に當面せざるを得ない。即ち,一般に行われている周期的電氣現象に對する調和分析の應用に就てのみ考えてみても,第1圖(a)の如き周期的電氣現象に調和分析を施して,その各項の値をみると,第1圖(b)の如くになり,非常に多くの項をとらねば,その誤差が少くならないのである。生物電氣現象にはこの樣な場合が多いのであつて,如何に調和分析が煩雜,且つ誤りの導入され易いものであるかが想像される。一方周波數特性,位相特性の正確な決定は,殊に超低周波に於ては,技術的に決して容易ではないのである。
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