Japanese
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特集 分子進化
糖脂質からみた動物進化
Evolutionary aspects on glycolipids
杉田 陸海
1
,
堀 太郎
1
Mutsumi Sugita
1
,
Taro Hori
1
1滋賀大学教育学部化学教室
pp.32-40
発行日 1989年2月15日
Published Date 1989/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905235
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糖脂質は脂溶性部分に糖が結合した複合脂質の一種である。この基部に当たる脂溶性部分の違いによりグリセロ糖脂質(glycoglycerolipid)とスフィンゴ糖脂質(glycosphingolipid)に大別されているが,おおざっぱな傾向としてグリセロ糖脂質は主に植物や細菌類に頻出する脂質である。しかし,動物細胞からもたとえばウニ生殖巣から1,2-diacyl-3(β-6′-sulfoquinovosyl)-snglycerol1)が,またブタ精巣から1-alkyl-2-acyl-3(β-3′-sulfogalactosyl)-snglycerol(セミノリピン)2)など,生理活性を持っていると予想されるようなグリセロ糖脂質が発見されている。
一方,スフィンゴ糖脂質は主として動物に分布し,活性部位と目されるオリゴ糖鎖の構造は動物の進化に伴って驚くほどの違いを示している。糖種だけに限っても,先口動物の軟体動物(二枚貝)ではマンノース,キシロース,グルクロン酸および種々の0-メチル糖が,また上位の節足動物(昆虫類)にもマンノースやグルクロン酸が共通して存在するが,これが後口動物の棘皮動物や脊椎動物になると0-メチル糖はもちろん,マンノースやキシロースも見られなくなるうえ,ウロン酸に代わってシアル酸が出現してくる。
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