Japanese
English
特集 脳のモデル
行動する機械
Self-acting machine
中野 馨
1
Kaoru Nakano
1
1東京大学工学部総合試験所
pp.41-48
発行日 1986年2月15日
Published Date 1986/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904828
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
最近,脳の研究は多角的に行われている。生理学的知見をできるだけ取り入れて脳をモデル化することによって,脳の機能の本質に迫ろうとする構成的研究もその一つである。その際,脳全体のモデル化は不可能なので,脳の機能を細分化して,その一つ一つを実現するモデルを構成してゆくのであるが,段々進めてゆくと,全体の絡みが重要であることがわかってくる。つまり,脳において,受容,認識,概念形成,記憶,思考,行動などは一体となって全体の機能を発現させており,別々には論じられない面がある。しかも,その面の解明こそ概して重要度が高い。そして,それを行うためには,脳をシステムとしてモデル化してみる必要がある。
構成的研究というのは,自動制御における「システム同定」のように,脳をブラックボックスとみなして,入出力関係が等しくなるようにモデルを構成し,それができたときブラックボックスの内容がモデルと同じ,または少なくとも類似していることを期待するのである。もちろんモデル化に際して生理学的にわかっていることを使うので,入出力関係だけからではないが,主に入出力関係から同定することになる。類似している可能性は,情報論的な必然性に導かれて,つまり等しい結果に到達する情報処理機構がそういくつもあるわけはないという意味で,思ったよりは高いはずである。
Copyright © 1986, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.