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解説
培養細胞への遺伝子移入—研究の現状と展望
A bird's-cye review of gene transfer in mammalian cells in culture
瀬野 悍二
1
,
鮎沢 大
1
Takeshi Seno
1
,
Dai Ayusawa
1
1埼玉県立がんセンター研究所血清ウイルス部
pp.313-319
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904536
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発癌遺伝子の単離(クローン化)をはじめとする最近の研究成果によって,今まで別個の要因によると思われていたウイルス発癌と化学発癌が,共通の分子機構のもとに語られるようになったことは衆知の事実である。さらには,慢性骨髄性白血病におけるフィラデルフィア染色体やバーキットリンパ肉腫における染色体の特異的な転座と癌形質との因果関係が,免疫学者まで引き込んで遺伝子のレベルで語られるようになったのである1〜4)。このような研究の驚異的な進歩に主役を演じた技術の1つが,本稿の表題にある遺伝子移入である。トランスホーメーションとかトランスフェクションと呼ばれているが,元をただせば微生物遺伝学における形質転換5)あるいはスフェロプラストへのファージDNA感染に由来する。発癌研究における形態的トランスホーメーションと区別するために生化学的トランスホーメーションと呼ばれることもあるが,本稿では「形質転換」と呼ぶことにする。
癌遺伝子のクローン化で脚光を浴びた遺伝子移入の技術も,究極的には,体細胞における遺伝子情報発現の調節機構を明らかにしていく研究の数少ない手段の1つとして期待されており,今後ますます重視されていくと思われる。しかし,技術的には未熟で問題は山積みされている(後述)。
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