話題
日米セミナー「神経回路網における"競合と協調"」
甘利 俊一
1
Shun-ichi Amari
1
1東京大学工学部計数工学科
pp.240-242
発行日 1982年6月15日
Published Date 1982/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903543
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人間の脳は1010個以上もの神経細胞から出来上っている巨大で複雑なシステムである。この脳の中で,人間の柔軟にして精妙な情報処理が行なわれている。現代のコンピュータの進歩は驚くべきものではあるが,人間のように考え,人間のように臨機応変に状況に対処できるコンピュータの出現は,まだ遠くにかすむ雲の中,全く見通しがつかない。脳はいったい"どのように"考えているのであろうか。脳の情報処理の基本様式はどのようなものであるのか。これは現代科学最大の難問の1つであり,多くの科学者技術者の挑戦を受けている。
脳の問題は,多くの分野の研究者が関心を抱いている。神経生理学・解剖学は,脳の神経細胞の動作と構造とを直接に研究する。心理学は刺激と反応の関係を通じて脳の仕組みに迫っていく。情報科学・計算機工学の立場からは,脳の情報処理の基本様式を知り,これをコンピュータ技術に利用することが重要である。数学者は複雑な脳が提起する数学的構造とその表現に興味を抱く。
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