Japanese
English
特集 細胞の寿命と老化
総説
培養細胞における老化
Cellular aging in vitro
山田 正篤
1
,
大野 忠夫
2
Masa-atsu Yamada
1
,
Tadao Ohno
2
1東京大学薬学部生理化学教室
2放射線医学総合研究所薬学研究部
pp.84-95
発行日 1982年4月15日
Published Date 1982/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903523
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哺乳動物個体に老化現象があることは,誰の目でみても明らかである。しかし,これが個体を構成する基本単位である細胞でも認められると主張しても,万人を納得させるのは結構難しい。個体を構成する細胞は様々に分化しており,細胞の分裂能力という観点だけからみても,一生を通じて分裂を続けるもの,分裂せずに生き続けるだけのもの,若齢期から早々と退化していくもの等が混然として一体をなしているからである。
細胞を生体から切離し,in vitroで培養することができれば,細胞の動態ははるかに単純な環境下で観察可能となる。1950年代からこのような試みが盛んに行なわれるようになり,ヒトの各組織も培養に供された。しかし経験的に言って.それまで数年以上にわたって培養可能であった細胞は,すべて癌細胞の形質を示し,染色体数も同一細胞集団でありながら,かなりのバラツキを含んでいた。これに対し,ヒト皮膚由来あるいは胎児組織由来の線維芽細胞は,初代培養時より2倍体性を維持し,長く継代してもこの性質は変わらず,正常細胞と目されていた。だが不思議なことに,この細胞は誰が試みても半年を経ずして継代培養不能に陥り,死滅する性質があった。この現象を1961年L.Hayflickは,正常細胞には一定の寿命があるために永遠に分裂できず,分裂能を失って細胞が死んでゆく過程は細胞の老化現象を示していると提唱した1)。
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