ちょっとサイエンス
細胞の老化
牧 智子
pp.353
発行日 1992年4月25日
Published Date 1992/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900557
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細胞は無限に分裂するのか?
水槽で海産動物を飼育した場合,最も長生きなのはイソギンチャクで,イギリスの博物館では90年も生き続けたものがあるそうです。しかし,いくら長生きといっても,このイソギンチャク,外形が変化していないだけで身体を形成している細胞はすべて新しいものと入れ替わってしまっているということです。ヒトの皮膚が更新されるように,イソギンチャクでは身体の細胞はそっくり入れ替わってしまうのです。これは「安全カミソリ」にたとえて説明されます。安全カミソリは刃が切れなくなったら新しい刃と交換できますが本体が壊れたらそれでお終いです。ヒトをはじめとする多細胞動物では本体にあたる部分と替刃にあたる部分があって,個体の死は本体の死を意味するわけです。
この説明に従うと,イソギンチャクの身体は替刃部分ばかりで本体がないのです。つまり,細胞分裂の能力が続く限り替刃の補給が続き,イソギンチャクは生き続けるわけです。
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