巻頭言
医学の基盤
山野 俊雄
1
1大阪大学
pp.53
発行日 1972年4月15日
Published Date 1972/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902917
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戦前,われわれの若い頃,秀才の多くが海軍兵学校とか工学部の航空工学科などにあこがれ,医科系には旧制高校の文科系からも容易に入学できた。医学科には理科系に進んだもののうち,数学や物理を敬遠するものが志望する傾向すらあつた。医科系大学,学部は最近ではむずかしくなつて数学や物理を敬遠していたのでは入学できなくなつたのは医学の進歩のためには好ましいことである。しかしこのような社会的風潮とは関係なく医学生物学が実は精密科学であるはずである。かつてのように論理的な試練に弱いからとか,手先が器用で外科に向くだろうというようなことで医科志望していたのではこれからの医学の進歩に対する寄与を期待できないと思われる。
医学は本来それ自体固有の方法をもつものではなく数学,物理,化学そして方法的にはそれらに依存する生物学に基盤をもつものであり,別のいい方をすれば人間生物学の探求とその応用といえるだろう。最近各方面の学問の進歩は急速であり,医学生物学の領域でも例外ではありえない。しかも著しい傾向は,物理学者や化学者でも医学生物学の問題に興味をもつ人がいつそう多くなつていることである。
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