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特集 細胞内輸送
細胞内輸送とは何か
Protein Traffic and Organelle Biogenesis
藤木 幸夫
1
Yukio Fujiki
1
1九州大学大学院理学研究科生物科学専攻代謝生理学研究室
pp.514-517
発行日 1999年12月15日
Published Date 1999/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901781
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生物の基本単位である細胞が,自らの遺伝情報に従ってその構造を作り上げ,複製し,またそれを制御していく機構を明らかにすることは分子細胞生物学の大きな命題である。真核細胞においては,細胞内小器官(オルガネラ)が外部環境との連携の中で独自の生体反応を営む場を構築しつつ,細胞機能の発現の中心的役割を担っている。オルガネラの形成・複製という複雑なプロセスも,個々のオルガネラの機能を担う実体がさまざまな酵素タンパク質および構造タンパク質であることから,細胞質で合成されたのち,どのオルガネラに運ばれ,どのように配置され,さらにはどのようにして独自の機能を発現するのかという問題に帰結する(図1)。いわゆるタンパク質自身がもつ情報(シグナル)とその認識(細胞内装置)に基づく細胞内選別輸送(ソーティング)という観点からとらえることができ,これら諸過程の障害の問題も含めたいわゆる「プロテインキネシス」は極めて重要な課題として世界的に急速に取り組まれている1)。その進展に伴い,核,ミトコンドリア,ペルオキシソーム,小胞体,ゴルジ装置,リソソームなどの細胞小器官の本態を,それらの静的構造だけでなくそれぞれに関与する分子基盤を理解し,細胞内でのタンパク質の輸送・移動さらにはオルガネラという巨大構造物の動的状態を明らかにすることは,細胞の生命活動を分子レベルで理解するうえで極めて重要な課題といえる。
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