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Rab(ラブ)はRasスーパーファミリーに属する低分子量GTP結合タンパク質で,rat brainに豊富に存在するRas様タンパク質として20年ほど前に同定された。Rabは酵母から哺乳動物に至るまで全ての真核生物に普遍的に保存されており,細胞内の小胞(膜あるいはオルガネラ)輸送を司ると考えられている1)。RabはGTPを結合した活性化型と,GDPを結合した不活性化型をサイクリングするスイッチ分子で,活性化型のGTP-Rabはエフェクターと呼ばれるパートナー分子と結合することにより膜輸送を促進する。Rabの活性化・不活性化は,グアニンヌクレオチド交換因子(GFF)やGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)などの因子により制御されることが知られている。一生物種当たりのRabの種類数は生物種ごとに大きく異なり,例えば,出芽酵母では11種類,線虫やショウジョウバエでは29種類,ヒトやマウスでは60種類以上の異なるRabアイソフォーム(Rab1-43のサブファミリーに分類)が存在する2)。高等多細胞生物ほどRabのアイソフォーム数が多様性に富む傾向があるため,高等動物の複雑かつ特殊化した細胞機能との関連性が示唆されている。しかしながら,ヒトやマウスに存在するRabの種類数は極めて多いため,他の膜輸送制御因子に比べこれまで解析が立ち後れていた。
最近,ヒトやマウスに存在するほぼ全てのRabやその制御因子Rab-GAPを対象としたゲノムワイドでの網羅的機能解析が行われるようになり,細胞種特異的なRabアイソフォームの機能の一端が明らかになってきた3)。本稿では,進化的に保存されたhousekeeping Rabの機能,多細胞生物に特殊化したRabアイソフォームの機能,そしてRabの機能障害によるヒトの疾患について最近の知見を紹介する。
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