Japanese
English
特集 幹細胞研究の新展開
幹細胞概説
Stem cell
帯刀 益夫
1
Masuo Obinata
1
1東北大学加齢医学研究所分子発生研究分野
pp.166-170
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901564
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
ヒトの個体を構成する分化した組織細胞の種類は200以上あるといわれている。これらの細胞は胚発生から個体形成過程で増殖と分化を繰り返した結果として集積される。1個体の細胞の総数がおよそ千個である線虫(C. elegans)の,Sulstonによってまとめられた個体形成過程の細胞系譜(図1)を見ると,個体形成が1個の卵からスタートして細胞分裂を繰り返しつつ分化して成体を造っていることがわかる。この過程では段階的に分化のポテンシャルが変わり,最終的な分化した細胞のセットができ上がる。そして,ヒトのように1014-15個にも及ぶ細胞数で個体を形成していても,その基本設計図は同じことである。1種類の細胞から出発して,多様に分化した細胞種を産み出すためには,細胞増殖の過程で質の違う細胞を生ずることが必要となってくる。そのためには,細胞分裂の際に不均等分裂を起こす必要がある。この不均等分裂には,二つの方法が採られると考えられる(図2)。その一つは細胞分裂が構造的に不均等分配を起こす仕組みを備えている場合である(自己決定)。もう一つは,いったん等価な分裂を起こすが,でき上がった二つの細胞同士がお互いに相互作用をすることでお互いが質を変える場合,もしくはどちらかの細胞に増殖因子や分化因子などが作用して質を変える場合(外的因子による決定)がある。一般にこのどちらか,あるいは両方の機構を利用して分化した細胞が産み出されてくる。
Copyright © 1998, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.