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特集 マトリックス生物学の最前線
細胞外マトリックスの生物学的機能
Biological functions of extracellular matrix
林 利彦
1
Toshihiko Hayashi
1
1東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系
pp.241-246
発行日 1997年8月15日
Published Date 1997/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901199
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I.細胞外マトリックスとは
多数の細胞により秩序ある細胞社会を形成するために必要な細胞外環境のことを細胞外マトリックスという。現代的な都市型の人間社会を高等動物の細胞社会になぞらえると,鉄骨の高層ビルをはじめ,高速道路,上・下水道,電気,ガスなど配管・配線などの都市のインフラストラクチャーにあたる構造体が細胞外マトリックスといえよう(図1)。
細胞社会における細胞外マトリックスに関する研究は,よくも悪くも生命現象における動的な構造および機能の解明とは離れたところで,独自の道を歩んできた。しかし,ここ10年近く,細胞外マトリックスは細胞接着を介して,細胞の機能へ大きな影響を及ぼすことが明らかになってきた。多数の細胞からなる組織・器官が秩序よく形成され,維持されている細胞社会を構成する上で,必須の要素であるとして,細胞社会生物学で主要な位置を占めるようになった1)。細胞外マトリックス成分分子中の細胞接着ドメイン,細胞内への情報伝達,受容体インテグリンの多様性とそれぞれの機能についての分子レベルでの情報が蓄積してきた2-4)(図2)。
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