特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
6.サカナ
攻撃行動
井口 恵一朗
1
1水産庁中央水産研究所
pp.556-557
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900833
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目標
噛みつきや体当たり,直接相手の体に触れないまでも,大きく口を開けたり鰭を立てたりの威嚇は,個体同士の遭遇によってしばしば観察される行動である。こうした攻撃的干渉は,何らかの資源(餌や配偶相手から隠れ場所や産卵場所まで含まれる)を排他的に利用しようとして起こるのが普通である。攻撃対象のもたらす情報は,視覚領域に限っても,位置・大きさ・形・色・模様などと多岐に及ぶ。ところが,Tinbergenらの行ったトゲウオの跳びはね闘争に関する有名な実験では,下部を赤く塗ったモデルであればたとえそれが魚の形をしていなくても,雄の攻撃行動が喚起されることが判明した。特定の反応を解発するのは,比較的単純なサイン刺激(トゲウオでは赤色)であることが実証されたのである。サイン刺激を備えたモデルを用いることによって,攻撃行動を定量的に測定することができる。さらに,異なる集団間や同一集団内の個体内で,あるいは同一個体の発育段階を追って,攻撃レベルの比較検討が可能になる。
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