特集 現代医学・生物学の仮説・学説
7.疾病
自己免疫疾患
狩野 庄吾
1
1自治医科大学アレルギー膠原病科
pp.622-623
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900670
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概説
自己免疫疾患は,臓器特異的自己免疫疾患と臓器非特異的自己免疫疾患とに分けられる。臓器特異的自己免疫疾患は,慢性甲状腺炎(橋本病)のようにある臓器に限局して病変がみられる疾患で,橋本病における抗サイログロブリン抗体や抗ミクロソーム抗体など臓器特異的自己抗体をともなう。臓器非特異的自己免疫疾患は,全身性エリテマトーデスに代表される全身の多くの臓器を侵す自己免疫疾患で,抗核抗体などの臓器非特異的自己抗体をともなう1)。臓器特異的自己免疫疾患は,臓器に特異的なホルモンその他の物質,あるいは細胞表面のホルモンレセプターなどに対する自己抗体をともなうことが多く,臓器非特異的自己免疫疾患は,膠原病で代表されるように細胞の核成分や血清蛋白に対する自己抗体をともなうことが多い。
歴史的には,20世紀はじめのEhrlichのHorror autotoxicusという言葉で代表されるように,自己の身体構成成分に対しては抗体は作られないと考えられていた。しかし自己免疫性溶血性貧血では,自己の赤血球に対する抗体が溶血の原因として発症機序に関与することが示され,病的状態においては自己の細胞表面抗原に対する抗体が産生されることが明らかになった。さらに,橋本病患者でみられる抗サイログロブリン抗体が,健康人の血液中にも微量検出され,自己抗体の産生が必ずしも病的状態に限らず正常にもみられることが示された。
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