特集 カルシウムイオンを介した調節機構の新しい問題点
新しいカルシウム結合蛋白質:レティキュロカルビン(Reticulocalbin)
小沢 政之
1
Masayuki Ozawa
1
1鹿児島大学医学部生化学第二講座
pp.224-225
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900556
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はじめに
レティキュロカルビンreticulocalbinは,EFハンドモチーフを持つカルシウム結合蛋白質で,小胞体内腔に存在する1)。われわれはテラトカルシノーマ細胞に発現される一連のドリコス凝集素結合性(糖鎖の非還元末端にGalNAcを持つ)糖蛋白質のcDNAクローニンクを行っていたが2,3),偶然,EFハンドモチーフを持つ蛋白質のcDNA断片を得た。最初,このcDNAはSPARC(secreted protein,acidic and rich in cysteine)4)やインテグリンのα鎖5)のように,細胞外に分泌もしくは細胞表面に発現される糖蛋白質をコードするのではないかと考えられたが,full-lengthのcDNAをクローニングし,その塩基配列を決定したところ,アミノ末端にはいわゆるシグナル配列が存在し,一方,カルボキシ末端には,小胞体内腔に存在する多くの蛋白質に見い出されるKDEL配列(ER-retension signal)6)によく似た配列HDELが存在することが判明した。そこで以下に述べるような実験を行ない,たしかにこの蛋白質が小胞体内腔に存在することを証明し,レティキュロカルビンと命名した。
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