Japanese
English
特集 細胞接着
細胞接着とストレス線維
Cell adhesion and stress fibers
藤原 敬己
1
Keigi Fujiwara
1
1国立循環器病センター研究所循環器形態部
pp.91-94
発行日 1990年4月15日
Published Date 1990/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900019
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I.はじめに―細胞の接着について
ある細胞の接着を云々するとき,われわれは便宜上その細胞の接着している相手が別の細胞である場合と細胞以外の物質である場合に分けて議論を進めることが多い。それはこれら二つの場合が低倍率の光学顕微鏡などで,形態的に容易に区別することができるからである。しかし顕微鏡の分解能を上げて観察したり,ことに分子レベルで接着を考えてみると,この区別がそれほど明確でなくなってくる。これが上で「便宜上」という言葉を使った理由である。
細胞と基質の接着は比較的容易にしかも明確に定義することができるのに対し,細胞と細胞の接着には,(非科学的な言い方であるが)隣合う細胞間でどれほど相手の存在を意識しているのかが問題になる。たとえば,密着結合(tight junction)は細胞同上の接着のもっとも緊密なもので,明らかに相手が必要である。しかしこのような緊密度の高い細胞間接着は例外で,普通には電子顕微鏡で見ると細胞間には明らかな間隙が認められ,その間隙には細胞外基質様物質が認められることも多い。したがって細胞同士の接着の場合にも,細胞―基質―細胞という連結を見ることができ,基本的には細胞間接着のあるものは細胞と基質間の接着としてとらえることができよう。しかし細胞間に間隙を持った接着の場合でも,明らかに相手の細胞の存在が重要なものもあり(たとえば,神経筋接合部),これらは細胞間接着とすべきであろう。
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