増大特集 生命動態システム科学
Ⅰ.定量生物学
2.組織・個体の計測
4)時計
(2)植物時計
遠藤 求
1
Endo Motomu
1
1京都大学大学院 生命科学研究科 分子代謝制御学
pp.434-435
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200026
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
■概日時計のシステム構造
全く異なる生き方を選んだ動物と植物であるが,どちらの生物も概日時計システムを持っている。しかし,生活様式の違いを反映し,そのシステム構造は大きく異なっていると考えられる。動物(哺乳類)の概日時計システムは脳の視交叉上核(SCN)に存在する強大な時計が末梢臓器などに存在する時計を支配している集中型(centralized)である(図)。一方で,植物には明確な中枢が認められないことから,少なくとも動物のような集中型ではないと漠然と考えられてきた。その他のシステム構造として,階層構造が存在する非集中型(decentralized)と階層構造が存在しない分散型(distributed)の二つのシステムが考えられるが1),植物の概日時計システムがこのどちらに相当するかは明らかにされていない。しかし,各細胞・組織が持つ概日時計がどのようにネットワークを形成し,個体として時間を測定しているかを明らかにすることは,生命動態を予測するための重要な基盤であり,植物における概日時計のシステム構造の解明は避けて通れない問題である。
Copyright © 2014, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.