増大特集 細胞表面受容体
●構造的特徴:7回膜貫通型◆受容体の遺伝子:ADRB2
β2-アドレナリン作動性受容体のハプロタイプと脱感作
高橋 英気
1
Takahashi Hideki
1
1関東ITソフトウェア健康保険組合健診センター
pp.388-389
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101479
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β2-アドレナリン作動性受容体(β2ADR)は肺では気道上皮や気道平滑筋などに分布し,交感神経終末や副腎髄質から分泌されるカテコラミンが結合して肺の生理機能の維持や種々の病態に重要な役割を発揮する。β2ADR刺激により細胞内c-AMPの上昇やKチャネルが活性化し,細胞内Ca濃度低下,protein kinase-A活性化,膜過分極を介して収縮した平滑筋が弛緩する。また,リンパ球などの炎症細胞ではIL-2やIL-6産生抑制,IL-2受容体発現抑制などを介し,炎症反応を抑制する。β2-アドレナリン作動薬(β2作動薬)には短時間作用型(short acting β2-agonist;SABA)と長時間作用型(long acting β2-agonist;LABA)があり,気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬物治療の主役を担っている。しかし,喘息患者がSABAを多用すると脱感作を起こし副作用や死亡率が増加すると報告され,β-agonist controversyと呼ばれ問題となった。その理由として,喘息の気道炎症により放出されたpro-inflammatory cytokinesによってβ2ARがダウンレギュレーションする一方で,β2作動薬自体が気道炎症を悪化させるため,薬理学的耐性や脱感作が起こり,さらに多量の薬を使用するという悪循環につながったことが考えられた1)。その後,β2ADRの遺伝子型によりβ2作動薬に対する脱感作の起こり方が違うという仮説に基づいて多くの実験や臨床研究がなされている。
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