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特集 神経回路の計測と操作
オプトジェネティクスによる神経細胞光操作
Optogenetic manipulation of neurons
酒井 誠一郎
1
,
八尾 寛
1
Seiichiro Sakai
1
,
Hiromu Yawo
1
1東北大学大学院 生命科学研究科 脳機能解析分野
pp.52-58
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101412
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脳というブラックボックスの中でどのような情報処理が行われているのか調べるため,研究者は回路内の神経細胞を刺激し,それに対する応答を記録するという実験を行ってきた。例えば,ホムンクルスで有名なWilder G. Penfieldの行った実験では,患者の脳領域を電気で刺激し,それに対する患者の応答から運動野や体性感覚野の体部位局在を明らかにした。また,シナプス可塑性の研究では,脳スライスに挿入した電極でシナプス前細胞の刺激を行い,その応答の変化を解析するという方法が長年用いられてきた。しかし,細胞外空間に置かれた電極で刺激を行うと,電場は電解質の溶液中に広がっており,さらに神経回路の内部では多様な神経細胞が混在して突起を伸ばしているので,果たしてどの神経細胞を刺激したのかは結局ブラックボックスの中である(図1A)。オプトジェネティクスは光を用いて細胞種選択的に刺激を行うことを可能にし,このブラックボックスの内部を照らし出す画期的な技術として神経科学に登場した(図1B)。オプトジェネティクスという名称は,オプティクス(光学)とジェネティクス(遺伝学)からの造語である。これは光感受性のタンパク質を遺伝学的手法により細胞に発現させ,光学技術を用いて神経活動を計測あるいは操作することに由来する1)。
本稿では,オプトジェネティクスで最もよく用いられているツールであるチャネルロドプシンChRについて解説し,次にオプトジェネティクスによる神経細胞の光操作をどのように行っているのかについて述べる。また,最新のオプトジェネティクス技術の開発についても紹介したい。
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