特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
2.小胞体
タンパク質を膜透過させるSecトランスロコン装置
濡木 理
1
Osamu Nureki
1
1東京大学大学院 理学研究科 生物化学専攻
pp.368-371
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101318
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細胞を外界から隔離する細胞膜は,水分子1滴も透過しない脂質二重膜である。しかしながら,細胞質で合成されたタンパク質の30%は分泌タンパク質として細胞外に分泌されるか,膜タンパク質として膜に組み込まれる。このようなタンパク質の膜透過は原核生物から真核生物まで保存された基本的な細胞機構の一つである。細胞質でリボソームにより新規に合成された分泌・膜タンパク質は,N末端に膜透過の荷札となるシグナル配列が付加された状態で合成される。その後,シグナル配列を認識した分子装置によって,前駆体タンパク質は膜へとターゲッティングされ,膜を透過して輸送される。生体膜にはトランスロコンと呼ばれるタンパク質膜透過チャネルが存在し,前駆体タンパク質を変性した状態で膜を透過させる。細菌の細胞質膜には膜タンパク質SecY,SecE,SecGからなる三者複合体がSecトランスロコンを形成し,細胞質からペリプラズム空間へのタンパク質輸送を担っている(図1)1-3)。この膜透過反応は真核生物の細胞質から小胞体へのタンパク質輸送に相当し,小胞体膜にはSecYEG複合体のホモログに当たるSec61α6762複合体が存在する。
筆者らは,Secタンパク質群から構成される「タンパク質を膜透過させる分子装置の動作機構」を解明すべく,各構成因子の構造解析ならびに機能解析を進めてきた。本稿では2008年に筆者らが報告したSecYE複合体のX線結晶構造解析と構造情報に基づく機能解析をもとに,新たに提唱されているタンパク質膜透過反応モデルを解説する。
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