Japanese
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特集 質感脳情報学への展望
感性的質感認知の脳内機構
Neural mechanism of KANSEI aspect of SHITSUKAN perception
本田 学
1
Manabu Honda
1
1国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第七部
pp.295-303
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101300
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脳に入力される感覚情報は視覚・聴覚といったモダリティごとに固有の分析的情報処理が行われる一方,全感覚モダリティの情報が感性・情動神経系(または報酬系)で統合され,快・不快や美醜などその動物にとっての価値判断が行われる。感覚情報の質感認知は美しさ・快さといった感性・情動反応の形成に大きな影響を及ぼすと同時に,逆に感性・情動系の総合的な反応,すなわち感覚情報を受容する主体の快・不快といった情動状態が各感覚モダリティの質感認知を修飾することは,日常的によく経験される現象である。このように,様々な感覚モダリティの質感情報がもたらす快・不快や美醜などの感性・情動反応を「感性的質感認知」と呼ぶ。
質感認知と感性・情動との密接な関係にもかかわらず,現在活発に始められつつある質感認知研究の多くは,各感覚モダリティに固有の情報処理を対象としており,質感認知に対する感性・情動神経系からのアプローチは必ずしも十分とはいえない。その原因の一つとして,個別性が大きい情動・感性反応を普遍的な現象として捉えることの難しさが挙げられる。また,それに関連して,感性的質感認知の基盤となるヒトの脳機能を客観的に捉える手法が大きな限界を持っていることも無視できない。例えば,現在,ヒトの脳活動を非侵襲的に調べるうえで有力なツールとして広く使われている磁気共鳴機能画像法(fMRI)は,ジェット機並みの140dB相当の騒音を発生する。このように,脳機能イメージングのストレスフルな計測環境や手技自体が,快・不快や美醜を伴う脳の繊細な感性的質感反応を捉えるうえで大きな問題となり得る。
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