特集 細胞核―構造と機能
7.核内移行
タンパク質の核内輸送の構造基盤
佐藤 衛
1
Mamoru Sato
1
1横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 生体超分子システム科学専攻
pp.492-493
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101224
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真核生物の細胞では核と細胞質が核膜によって隔てられているため,DNA複製・修復・組換・転写因子やヒストンなどの核内タンパク質は細胞質で合成された後,核内に能動的に輸送される。このようにタンパク質の核内移行は遺伝子の発現や調節など機能的に重要な役割を担っており,生体内のプロセスの中でもその重要性は極めて高い。核と細胞質を隔てる核膜にはそれを貫くように分子量60-120 MDaの核膜孔複合体が存在し,分子量30kDa以下の小分子やイオンはその内部を通って拡散により核内に自由に移行できるが,それ以上のタンパク質などの巨大分子は自由に移行できない。このような巨大分子には核局在化シグナル(NLS)が存在し,これを核内輸送受容体と呼ばれるタンパク質が認識・結合することによって核膜孔複合体を通過することができる。このような核内輸送受容体の多くはインポーチンβファミリーに属しているが,このファミリーには細胞質から核への移行のほかに核から細胞質への物質輸送に関与する核外輸送受容体や核-細胞質間をシャトル輸送する受容体も含まれ,いずれの受容体も基質の輸送には低分子量Gタンパク質Ranが関与している。インポーチンβファミリーの核内輸送受容体はヒトでは20種類以上知られているが,ここでは,hnRNP A1分子に含まれるグリシンに富む核局在化シグナル(M9 NLS)を認識して核内に輸送する受容体として発見されたトランスポーチン1について,輸送基質の細胞質での認識と核内での解離機構およびインポーチンβによる核内輸送機構との違いを概説する。
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