特集 シナプスをめぐるシグナリング
17.可塑性
Dynamin依存性シナプス小胞エンドサイトーシス
山下 貴之
1
Takayuki Yamashita
1
1(独)沖縄科学技術研究基盤整備機構
pp.548-549
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101081
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シナプス前末端(神経終末)内には,内部にグルタミン酸などの神経伝達物質を蓄えた,シナプス小胞と呼ばれる直径約40-50nmの膜胞が存在する。シナプス前末端に活動電位が到達すると,電位依存性Caチャネルを介してCa流入が起こり,シナプス小胞は細胞膜と融合して神経伝達物質を細胞外に放出する(エキソサイトーシス)。細胞膜に融合した小胞膜はエンドサイトーシスにより回収され,神経伝達物質の再充填を経て再利用(リサイクリング)される。この小胞リサイクリング機構は小胞の枯渇を防ぎ,シナプス前末端が情報伝達能力を維持するために不可欠である。
小胞リサイクリングにおけるエンドサイトーシスには,(1)小胞が細胞膜と完全に膜融合(full-fusion)したのち,クラスリンを介してエンドサイトーシスされる経路,(2)小胞がfull-fusionせずに一部が融合して内容物を放出したあとそのまま解離するkiss-and-run,(3)小胞よりも大きなエンドソーム状の膜が一度に陥入してエンドサイトーシスされたのち,buddingによって小胞を生じる経路,の三つの経路が知られており,活動頻度の強弱に伴うCa流入量・エキソサイトーシス量の変化に応じて,それぞれの経路が使い分けられている。より生理的条件下では,(1)の経路が優先的となると考えられており,一方,(2)の経路は最近中枢シナプスでの存在が示されたが,生理的条件下でどの程度寄与するかは未だcontroversialである。また,(3)の経路は活動が非常に高頻度で起こるような場合にのみ使われ,シナプス前末端膜の異常膨張を防ぐ働きがあると考えられる。
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