特集 シナプスをめぐるシグナリング
17.可塑性
SAPファミリー蛋白質
稲野辺 厚
1
,
倉智 嘉久
1
Atsushi Inanobe
1
,
Yoshihisa Kurachi
1
1大阪大学大学院 医学系研究科 分子・細胞薬理学講座
pp.546-547
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101080
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神経シナプスは神経細胞間の情報伝達の本質的な場である。この細胞間連絡は主に一方向性を示すため,軸索終末(前シナプス)では神経伝達物質の放出に,樹状突起(後シナプス)では神経伝達物質の受容に特化した機能を支える構造を有する。特に興奮性シナプスにおける後者は電子顕微鏡下で,高い電子密度として観察される特異構造(PSD;postsynaptic density)を付帯する。この領域に集積する蛋白質群は一般的にSAP(Synaptic Associated Proteins)ファミリー蛋白質と呼ばれ,特にPSD-95,Dgl-A,ZO-1と呼ばれる膜蛋白質アンカー蛋白質の共通モジュールとして同定されたPDZドメインを有する蛋白質(PDZ蛋白質)が多く含まれる。
PDZ蛋白質は膜受容体,イオンチャネルを集積させるだけでなく,膜蛋白質のendocytosisによる膜上での機能蛋白質の発現量を調節し,それらの活性を修飾し,そしてシナプスへの機能蛋白質の選択的輸送にも関与する。その結果,記憶,学習などの神経可塑性に深く関与する。この稿では,PDZ蛋白質の分子特性を俯瞰した後に,イオンチャネルの中でも特に内向き整流性K+(Kir)チャネルに対するPDZ蛋白質の作用について紹介する。
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