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体液(水・電解質)の恒常性維持は主に水・電解質の体外からの摂取と腎臓からの排泄のバランスによって行われている。その際の制御パラメーターは浸透圧と循環血液量であり,これらの値はほぼ設定値(セットポイント)に維持されている。たとえば数日にわたり絶水状態が続くと体液の浸透圧は高まり,循環血液量は減少する。そこで水分を摂取し,尿量を減じることにより,体内に水分を保持し,体液の浸透圧の低下と循環血液量の回復がもたらされる。この調節機構には,調節性行動としての飲水・食塩摂取行動とともに自律神経・内分泌系を介する腎臓の排泄機能の調節が関わっている。生体はこれら複数の調節機構を統合・協調して駆動し,内部環境の恒常性を維持している。
近年,嗜好や習慣またストレスなどに起因して,食・飲生活の乱れが問題視され,特に生活習慣病の危険因子として警告されている。中でも食塩(NaCl)の過剰摂取は食塩感受性高血圧を誘起する。しかし生体には元来,過剰摂取の食塩をうまく処理し,浸透圧やNa濃度を一定に保つ機構が備わっている。この適応機能の発現には視床下部の室傍核(PVN)と視索上核(SON)が関わっている(図1A)。両部位にある神経分泌ニューロンは下垂体後葉に投射し,バゾプレッシン(AVP)とオキシトシン(OT)を活動電位依存的に体循環に分泌する。さらに,PVNのニューロンの一部は脳幹や脊髄の自律神経節前ニューロンと直接線維連絡を持ち,自律神経系出力を調節している。
本稿では,中枢内へ高張食塩水(H-NaCl)を負荷することによって中枢性浸透圧受容器あるいはNa受容器を直接刺激した際,自律神経・内分泌系の統合部位である視床下部室傍核(PVN)の大細胞・小細胞ニューロン活動が内因性バゾプレッシン系を介していかに修飾されるかについて,われわれの研究成果を基に解説する。図1BはこのPVNへの主な入力系,核内の亜核,ならびに出力系の概要を示す。
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