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Hippocampal inward rectifier(HIR)は,脳の海馬(brain hippocampus)のcDNAライブラリーよりクローニングされた内向き整流性カリウムチャネルであることから,そう名付けられた1)。現在のところ,哺乳類のカリウムチャネルは,その構造から,3種類(膜6回,4回,2回貫通型)に分類され(図1),内向き整流性K+チャネルは膜2回貫通型である。このチャネルは一般的に内向きにカリウムイオンを通しやすく,外向きに通しにくいという電気生理学的性質を持つことから,内向き整流性カリウムチャネル(Inwardly rectifying K+ channel:Kir)と呼ばれている。機能的なチャネルは四つのKirサブユニットで構成されるが,現在までに16個のサブユニットの遺伝子が単離されている(図2)。これらのサブユニットは,アミノ酸配列の相同性およびチャネル機能より,1)古典的内向き整流性カリウムチャネルKir2.0/IRKx,2)上皮細胞やグリア細胞でカリウムイオンの輸送を司るKirチャネルKir1.1/ROMK,Kir4.0,3)G蛋白質活性型カリウムチャネルKir3.0/GIRKx,4)ATP感受性カリウムチャネルKir6.0,の四つのグループに分類されている。
HIRはその中のKir2.0のグループに属し,われわれが最初に単離したMB-IRK3と同一のものであり2),現在Kir2.3と呼ばれている。異所性に発現させると強い内向き整流性を示すチャネルであり,細胞内外の酸性化によりそのチャネル活性は抑制される3)。また,Cキナーゼによりリン酸化され,チャネル機能が抑制されるとも報告されている4)。脳においては,Kir2.1が前脳・小脳,Kir2.2が小脳,Kir2.4が顔面神経核運動神経などに多く分布しているのに対し,HIR/Kir2.3は前脳に特に多く発現していることが判明している。海馬では,神経細胞の他にオリゴデンドログリアに分布しているという報告もあるが5),電顕レベルでの詳細な局在の検討は未だ行われていない。
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