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特集 脳科学が求める先端技術
ENUミュータジェネシスによる脳神経系異常モデルマウスの開発
ENU mutagenesis to develop mouse models for brain/nervous system abnormalities
和田 由美子
1
,
若菜 茂晴
1
Yumiko Wada
1
,
Shigeharu Wakana
1
1理化学研究所ゲノム科学総合研究センターゲノム機能情報研究グループ
pp.260-265
発行日 2006年8月15日
Published Date 2006/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100204
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ヒト,マウス,ラットなどの全ゲノム情報の解明に伴って,試験管内(in vitro)やコンピュータ上(in silico)でのゲノム機能解析が急速に進展し成果をあげている。しかし,現時点においてはin vitroやin silicoの実験系のみでシステムとしての生命の全体像をとらえることは困難であり,個体レベル(in vivo)での遺伝子の機能をいかに体系的かつ網羅的に解析していくかがポストゲノム研究の課題の一つとなっている。
脳神経科学をはじめとする生物の高次機能の解明をめざす基礎生物学研究は,さまざまなモデル動物の変異体を解析することで大きな成果をあげてきた。特に,ヒトとの遺伝的相同性が高く,変異体の開発・解析の基盤が整っているマウスは,生命科学の根幹を担う代替困難なモデル動物である。これまでにさまざまなマウス変異体が開発されてきたが,これら変異体で解析可能なのはマウスで発現している全遺伝子の一部にすぎず,今後ゲノム機能解析を行っていく上でのマウス変異体リソースの不足が叫ばれてきた。このような背景のもと,体系的にマウス変異体リソースを開発し,それらを用いて網羅的なゲノム機能の解析を行っていこうとする大規模プロジェクトが相次いで立ち上がっている。そのうちの一つが,化学変異原ENUを用いて興味深い表現型を示すマウス変異体を体系的に開発していこうとするENUミュータジェネシスプロジェクトである。本稿では,ENUミュータジェネシスの特色と方法論について解説し,ENUによるマウス行動変異体の開発状況について紹介したい。
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