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●細胞分化とタンパク質間相互作用
細胞分化,特にterminal differentiationを規定する事象として,細胞増殖の停止と細胞(組織)特異的遺伝子発現が考えられる。これらいずれにおいても,タンパク質間相互作用に基づく遺伝子発現制御がその根幹にあることはいうまでもない。タンパク質間相互作用は大きく(1)転写因子間の相互作用,(2)転写因子とガン抑制タンパク(レチノブラストーマタンパク,RB),クロマチンリモデリング因子などの制御タンパク質やRNAポリメラーゼとの相互作用,(3)ヒストンテールの修飾に依存した転写制御因子とヒストンの相互作用,(4)核タンパク質と転写因子などの相互作用,に分けることができる。増殖制御に関しては,細胞周期あるいはDNA合成などに関する遺伝子の発現を活性化する転写因子E2FがRBファミリータンパク質との結合により不活化され,細胞増殖が抑制されることはあまりに有名である。
E2FとRBファミリータンパク質の結合は,サイクリン依存性プロテインキナーゼ(CDK)によるRBのリン酸化により阻害され,さらにCDKによるリン酸化はp16などCDKインヒビターで抑制される。したがって増殖制御が破綻したガン細胞では,p16遺伝子(Ink4a領域)などに異常が見られることも多い。RBファミリーのいわゆるポケットタンパク質にはRB(p105),p130,p107の3種があり,また,転写因子E2FはE2F1-7に分類される。このうちE2F1-5はポケットタンパク質と複合体を形成し,増殖関連遺伝子などの転写を抑制する。分化したG0期にある細胞でおもに働く抑制複合体は,E2F4-p130複合体と考えられている。また,抑制複合体の成分としてはRBファミリータンパク質と結合するヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)や,クロマチンリモデリング因子SWI/SNFなどが含まれるといわれている1)。
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