特集 —知ってるつもり? 知らなきゃいけない?—新語・新概念辞典
【新語・新概念(五十音順)】
糖尿病クラスター分類
島袋 充生
1
1福島県立医科大学 糖尿病内分泌内科学講座
キーワード:
糖尿病クラスター分類
,
糖尿病サブクラス
Keyword:
糖尿病クラスター分類
,
糖尿病サブクラス
pp.152-153
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350020152
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糖尿病は、成因によって1型糖尿病と2型糖尿病に分類される1)。1型糖尿病は膵臓Langerhans島炎によるβ細胞の破壊が引き起こす、インスリン分泌能の著しい低下で起こる。2型糖尿病は、インスリン抵抗性とインスリン分泌能低下と、2つの病因の組み合わせで起こるが、2つの病因は多くの遺伝的要因と環境的要因が重なっており、それぞれの相対的な寄与は患者ごとに不均一である1)。糖尿病をもつ人は、臨床的特徴、すなわち、病態、合併症の起こり方、治療反応性などが個人で異なるため、これらをすべて考慮しながら、1人ひとりに最適な医療を進めることが強調されている。これを、個別化医療、あるいは先制医療(先進医療)と呼ぶ2)。しかし、実際に個別化医療を進めることは容易ではなく、現時点で臨床的に標準化された方法があるわけではない。1つの手段として、糖尿病をサブクラスに分けてサブクラスごとに診断や治療を最適化する試みが考えられる。
人工知能の手法である機械学習を用いて糖尿病をサブクラスに分ける試みが、糖尿病クラスター分類(「クラスター」とは群に分けるという意味)である。Ahlqvistら3)は北欧人コホートで、糖尿病発症時に認められる膵臓Langerhans島自己抗体である抗GAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)抗体、発症年齢、BMI、HbA1c、HOMAβ(インスリン分泌能の指標)、HOMA-IR(インスリン抵抗性の指標)に基づいたクラスター分析で、臨床的特徴や糖尿病合併症に違いのある5つの糖尿病サブクラスを報告した。日本人の報告を含む複数人種のコホートでも同様に、5つのサブクラスに分かれることが確認された4)。
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