特集 薬物治療の質向上
Part 2 薬物治療を適切に個別化するための基本知識
5.薬物相互作用—薬物動態学的に,特に臨床で注意しなければならないものを中心に
土岐 真路
1
Shinji TOKI
1
1聖マリアンナ医科大学病院 治験管理室
pp.261-272
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218804090120020261
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薬物相互作用(drug-drug interaction)により診療上の足をすくわれた経験はないだろうか。筆者は,大動脈弁置換術後(機械弁)の患者の療養中に,大腸がんの内服のカペシタビンを含む化学療法が始まり,服用していたワルファリンの薬効がとてつもなく増強される事案を経験し,これに対する認識を改めた苦い思い出がある。
薬物相互作用は,治療効果の変動や副作用発現リスクに密接にかかわるため,臨床的に重要である。複数の薬剤を併用する際,ある薬剤が他剤の血中濃度の上昇や低下を引き起こし,予期せずして効果を強めたり弱めたりすることがある。特に,高齢者や慢性疾患をもつ患者において顕著で,副作用が強く出ることや,不十分な治療効果につながるリスクが高い。
また,患者の10.9%が薬の副作用のために入院となると報告されている1)。さらに,入院患者が経験する副作用の59.1%に薬物相互作用が関連しているという研究もある2)。薬剤の追加や治療方針の変更時には,薬物相互作用の可能性をよく検討し,適切に管理することが安全で効果的な薬物治療には不可欠である。
本稿では,薬物相互作用の生じる原理を紹介したうえで,代表的な相互作用の例を紹介する。
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