連載 間の間・2
感染るんです、はい。—「私さあ、風邪引いちゃったみたい」「えっ、そう言われると、なんか俺も調子悪くなってきたな」
伊藤 亜紗
1
1東京工業大学リベラルアーツ研究教育院
pp.425
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200518
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夫に体調不良を訴えると、決まって肩すかしを食らう。私としては「大丈夫?」とか「熱あるの?」とか、月並みな言葉でいいので気遣いがほしい。頭がだるくなってきたし、喉の調子も怪しい。この「風邪」と宣告されつつある我が身に、せめてもの共感を示してほしいのだ。
だがこういう場面で、夫は絶対に共感を示さない。同調してしまうのである。彼もまた、風邪にかかってしまうのだ。そして彼自身の体のことを心配し始める。首を回して関節の腫れを確かめたり、額に手を当てて熱を確認したり……。そして決まっていうのだ、「俺も」と。
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