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Case
急性腹症と低ナトリウム血症の精査のために紹介された若い女性
患者:30歳台前半,女性.既婚.
主訴:低ナトリウム血症の精査依頼.
現病歴:X-2年に,人工妊娠中絶を2回実施した.この頃「甲状腺機能低下症」を指摘され,レボチロキシンの内服を開始した.
X-1年前に,自然流産した.この頃から月経前に強い下腹部痛を繰り返すようになっていた.
X年4月初旬に,「月経前症候群」の診断で精神安定薬などが開始されていた.
X年4月中旬に,左下腹部痛で産婦人科を受診し,CT検査で右卵巣腫瘍(dermoid cyst)を指摘された.「卵巣腫瘍茎捻転」の診断で腹腔鏡下摘出術を受け,術後のトラブルなく軽快退院した(手術では,捻転の所見なし).
X年5月下旬,心療内科で「うつ状態」に対してフルボキサミン25mg(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が開始された.
X年6月初旬,下腹部痛および食欲不振が出現.その翌日の夜には痛みが増悪し,悪心・嘔吐を伴うようになったため,産婦人科に緊急入院となった.
入院後の経過:意識清明,血圧116/94mmHg,脈拍数72回/分・整,体温36.8℃.腹部全体に軽度の圧痛はあるが,反跳痛や筋性防御は認めなかった.白血球数4,500/μl,CRP(C反応性蛋白)≦0.3mg/dl,腹部単純X線検査(図1)は腸管ガス像が多いのみでニボー形成はなく「腸閉塞疑い」と診断され,補液のみで腹部症状は軽快した.
入院第3日目に,血清Na 118mEq/lと著明な「低ナトリウム血症」を認め,精査のため内科に転科となった.内科受診時には腹部症状はほぼなく,点滴による補液が行われていた.
初期診断:SSRIによるADH(抗利尿ホルモン)過剰分泌症(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone : SIADH),月経前症候群,腸閉塞疑い.
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